ふくろうくん
私は絵本が好きです。
その代わり、挿絵の無い文字だけの本をあまり読むことなく生きて、25歳を迎えてしまいました。
どのページも色で溢れていて、活字の少ない絵本が、未だに好きなのです。
時にモノクロですが、それもまたよし。
本に対する成長が、5歳くらいで止まってしまったのかもしれません。
なので、好きな絵本のことを、わざわざ苦手な活字を使って考えてみることにしました。
ふくろうくん、という絵本があります。
アーノルド・ローベルさんという人が作者で、いくつかの短編が一冊になったオムニバス形式の作品です。
主人公は、少し変わり者のふくろうくん。
ひとりぼっちで暮らしていますが、ちっとも寂しそうではありません。
自分が1階にいるとき、2階の様子はどうなっているのだろう?
と気になったふくろうくんは、ものすごい勢いで階段を駆け上がったり下りたりします。
自分が階段の下にいる間に、なんとか階段の上へ行こうとするのです。
ふくろうくんは、そういう、毎日を送っています。
また別の日には、自分の"なみだ"を溜めて、なみだのお茶を淹れようとします。
空っぽのポットを抱え、ふくろうくんはポツリポツリ、悲しいことを思い出しました。
「あしの おれてしまった いす」
「ストーブの うしろにおちて みつけられっこない スプーン」
「うたえなくなった うた」
「なぜなら 歌詞を わすれてしまったから!」
そうして、ひとつぶずつ、ポットの中にふくろうくんのなみだが転がり落ちていきます。
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どうしてそんなことするのだろうね、ふくろうくんのお家には蛇口が無いのかしら。
と、子供の私は思っていました。
でもね、針の先くらいの小さなキッカケが、なみだの水風船を突き刺してしまう夜、たまにあるように思います。今は。
あれよあれよと水が漏れて、ポットがいっぱいになること、ありません?
ふくろうくんは、なみだのお茶を飲みながらこう言います。
「なみだの おちゃは いつでも とても いいもんだよ」
いいもんだそうです。
ふくろうくんは、ひとりぼっちでヘンテコな生き物。
性別も年齢も不詳です。
けれど、この絵本は読むたびいつも、ほんの少しの共感を残してくれます。
自分がいま楽しいんだか悲しいんだか、どんな気持ちかすら分からなくなった時、ついつい選んでしまう一冊でした。
ふくろうくんよ、今日もありがとう。